社団法人鹿児島県臨床工学技士会

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血液浄化について

血液透析

腎臓の働き

腎臓は、体内に溜まった老廃物や余剰な水分を尿として体外に排泄しますが、電解質の調節や血液pHの是正,ホルモンの分泌なども行われ、生命を維持するために重要な役割を果たしている臓器です。腎臓の機能が低下して、体内の老廃物や水分を十分排泄しきれなくなった状態を腎不全といい、急性と慢性の二つがあります。急性腎不全は、数時間ないしは数日の経過で急に尿が出なくなってしまう状態をいいます。原因はいろいろありますが、例えば出血による血圧低下や血管が閉塞したために腎臓に十分血液が行かなくなった場合,毒物,薬物によって腎臓の細胞が障害を受けた場合,尿管結石のように尿の通り道が狭窄や閉塞をうけ、尿の通過障害を起こした場合などです。いずれも適切な治療を施すことで腎臓の機能は回復します。これに対して、慢性腎不全は、数年から十数年の経過をとって、次第に腎機能が低下し、やがて体内の老廃物や水分を十分排泄しきれなくなり尿毒症に陥るものです。腎機能が健常者の3割以下まで低下すると浮腫、高血圧、めまい、はきけ、貧血、食欲低下など様々な症状が表れ、1割以下になると血液透析や腹膜透析、腎移植のいずれかの治療が必要となります。ここでは慢性腎不全の一般的な治療法である血液透析について説明します。

血液透析とは

腎不全となった患者さんに、体外循環技術を利用して、体内に溜まった老廃物や余剰な水分を除去することができる治療法です。通常、血液の出入口であるシャントを作製した前腕に針を2本刺し、血液を取り出す回路(動脈側血液回路)と血液を体に返す回路(静脈側血液回路)を接続します。血液ポンプによって導き出された血液は、透析器(ダイアライザ)を通り、ここで血液中の老廃物や水分が除去され、体内に返されます。この一連の流れを4?5時間続けることによって、老廃物や水分が正常な血液に近い値となって1回の透析を終了します。毒素や水分はまた溜まりますから週に2〜3回行う必要があります。

ダイアライザは、ストロー状の中空糸を1万本程度束ねてプラスチックの容器に納めたもので、中空糸の内側を血液が、外側を透析液が流れます。中空糸には小さな孔が開いており、血液と透析液はこの半透膜(透析膜)を介して接触することにより拡散,限外濾過の原理よって物質の移動が行われます。
透析液は、ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,クロール,重炭酸,ブドウ糖などが入った電解質液で、正常な体内の電解質とほぼ同等濃度になった液体を、1分間に500mlの流量でダイアライザに流します。
血液透析
(図-1)
透析液は、通常水道水で作成しますが、水道水の不純物を除去するための水処理装置や透析液原液溶解装置,透析液供給装置などの設備が必要となります。 血液透析
(図-2)

血液透析の原理

拡 散
異なる濃度の溶質が混じり合う溶液を、半透膜を介して接触させると、半透膜の孔より小さい物質は、濃度の高い方から低い方へ均一になるまで移動しようとする現象のとこです。血液透析では、血液中の尿毒症物質(尿素窒素,クレアチニン,尿酸など)は膜孔を通るため、たくさん含まれた血液側から、それらが含まれていない透析液側へ移動し捨てられます。不足している電解質などは、透析液から血液中へ移動し補うことができます。赤血球や血球なのど血球成分やアルブミンやグロブリンなどの蛋白質は、孔より大きいので、血液側から透析液側へ捨てられることはありません。
拡散
(図-3)
限外濾過
水を入れた容器を半透膜で仕切り、一方の水面に圧力をかけると、水の分子は半透膜の孔を通って、もう一方の水へ移動します。
血液透析では、血液側から透析膜に対して押す圧(陽圧),透析液側から引く圧(陰圧)となる限外濾過圧をかけることで、血液中の水分を透析液側へ移動させ、体内に溜まった余分な水分を除去できます。
限外濾過
(図-4)

血液透析における臨床工学技士の役割

血液透析療法は、医師を中心としたパラメディカルスタッフが連携して施すチーム医療です。臨床工学技士の専門業務として、透析装置およびその周辺機器の保守・管理と透析液の作製や清浄化などがあります。これは、部品,消耗品や配管の交換と動作・安全性の確認などの定期点検、故障への対応および透析用水である水道水中の不純物の管理や透析液中のエンドトキシンや細菌の低減化などです。また、治療現場では各種装置の始業点検および透析液濃度を確認します。回路の組立・プライミングを行った後、穿刺して血液回路を接続して体外循環を開始します。その後、透析条件を装置に設定して透析が始まります。透析中は、監視装置のチェックや患者の状態把握,偶発症の対処を行います。治療が終了すると血液の返血を行い、装置の終業点検となります。
これらの業務を、毎日確実に遂行することで、安全で効果的かつ円滑な治療を提供することができます。

血液吸着(hemo adsorption HA)

吸着剤をカラムに充填し、体外循環施行中の血液を潅流法により接触させることで病因物質を吸着除去する方法。
下記に示す吸着カラム以外にもいろいろな吸着カラムがあります。

PMX(トレミキシン)
ポリスチレン誘導体繊維に抗生物質ポリミキシンBを共有結合によって固定化した繊維をカラムに充填し、エンドトキシンを吸着除去する 全血液潅流法によりPMX1本につき使用時間 2時間適応疾患は敗血症など近年循環動態やMOFの改善が得られると考えられています
DHP−01
活性炭の表面をヒトロキシメタクリレートでコーティング薬物中毒(パラコート中毒)肝性昏睡などの治療に使用抗凝固剤のメチル酸ナファモスタットも吸着してしまうことからヘパリンを使用する事が多いです
リクセル
アミロイドーシスの原因物質とされるβ2―MGを選択的に吸着除去する主に血液透析と併用ヘキサデシル基をリガンドとするセルロースビーズを充填充填量の異なる2種類があります
LCAP(白血球除去療法)
血液中の活性化した白血球成分を選択的にを吸着除去する仕様としてポリエステル不織布カラム前後では顆粒球・単球は95%、リンパ球は70%吸着除去関節リウマチ・潰瘍性大腸炎などの治療に使用する治療時間としては1時間、血液処理量は2〜3リットル白血球除去療法には潰瘍性大腸炎などの治療に使用するGCAPもあります

血漿吸着(plasma adsorption PA)

吸着原理としては血液吸着と同じであるが、血漿分離器を使用する事により血液から血漿成分を分離し、分離した血漿成分のみを吸着カラムに接触させ病因物質を選択的に吸着除去する方法。
血液が直接吸着カラムに接触しないので生体適合性(血球の破壊や血液凝固など)は比較的良好で吸着カラムの種類を変えることにより、様々な疾患に使用できる。下記に示す吸着カラム以外にも重症筋無力症・ギランバレー症候郡・劇症肝炎等の保健適用の吸着カラムなど多種多様であります。

LDL吸着療法
吸着カラムとしてリポソーバを使用(デキストラン硫酸をリガンドとしたセルロースビーズを充填)血漿中のアポ蛋白B(LDL・VLDL・Lp(a))を選択的に吸着除去するHDLはほとんど減少しない賦活液にて吸着カラムを再生する脂質以外の血漿成分にはほとんど影響を与えない適応疾患としては、家族性高コレステロール血症・閉塞性動脈硬化症・巣状糸球体硬化症
免疫吸着療法
吸着カラムとしてセレソーブを使用(デキストラン硫酸をリガンドとしたセルロースを充填、リポソーバのリガンドと同だがセルロース担体のポアサイズとリガンドの密度を変えることにより目的吸着物質を変化させている抗DNA抗体・免疫複合体・抗カルジオリピン抗体を選択的に吸着除去する 賦活液にて吸着カラムを再生する)適応疾患としては、SLEなどに使用します。

血漿交換療法(plasma pheresis PP)

体外循環治療中の血液を血漿分離器にて血球成分と血漿成分に分離し、分離した血漿成分(血漿成分中に存在する病因物質)を破棄(全部・一部)その量に見合った分の新鮮凍結血漿(FFP)やアルブミンを補充する治療です。血漿分離器には遠心分離器と濾過分離器があり、透析施設では濾過分離器が多いと思われます。(遠心分離器は血液センターなど)他の血液浄化法に比べ比較的大きな分子量まで除去可能で、いわゆる難病と呼ばれる治療が困難な疾患、自己免疫疾患や移植関連にも使用される。血液透析との併用して行うこともあります。

単純血漿交換療法(Plasma Exchange PE)
体外循環治療中の血液を血漿分離器にて血球成分と血漿成分に分離し、分離した血漿成分(血漿成分中に存在する病因物質)を全て破棄し、新鮮凍結血漿(FFP)やアルブミンを補充する治療分子量の大き病因物質(免疫複合体・蛋白結合物質)などを除去するが、DFPPに比べて選択的に病因物質を除去すると言うことではない一回の治療にFFPを3〜4リットル使用することもありコストは高いFFPによる感染やクエン酸中毒によるCa低下がおこりCa製剤を治療中注入することがある血漿分離器の溶血に気をつける保健適用疾患として多発性骨髄腫・マクログロブリン血症・劇症肝炎・薬物中毒・重症筋無力症・悪性関節リウマチ・全身性工リテマトーデス・血栓性血小板減少性紫斑病・重度血液型不適合妊娠・術後肝不全・ギランバレー症候群・天痘瘡・類天痘瘡・巣状糸球体硬化症・家族性高コレステロール症・閉塞性動脈硬化症・急性肝不全など
二重濾過血漿交換療法(Double Filtration Plasmapheresis DFPP)
体外循環治療中の血液を血漿分離器(一次濾過膜)にて血球成分と血漿成分に分離し、分離した血漿を血漿成分分離器(二次濾過膜)を用いることにより、大きな分子量の病因物質のみを破棄しアルブミン等で補充する治療二次濾過膜にて濾過された血漿成分の内小さな分子量物質(アルブミンなど)は体へ返し、濾過されなかった大きな分子量物質は病因物質(自己抗体・免疫複合体など)と想定され破棄されるのでPEと比べると選択的との言える二次濾過膜を使い分けることにより病因因子の選択ができる実際はアルブミンも失うことがあり、アルブミン等で補充が必要血漿分離器の溶血に気をつけるPEと比べると補充置換量は少ないが体外循環回路が複雑化する保健適用疾患として、多発性骨髄腫・マクログロブリン血症・重症筋無力症・悪性関節リウマチ・全身性工リテマトーデス・血栓性血小板減少性紫斑病・重度血液型不適合妊娠・術後肝不全・ギランバレー症候群・天痘瘡・類天痘瘡・巣状糸球体硬化症・家族性高コレステロール症・閉塞性動脈硬化症など

持続的血液透析濾過法(Continuous Hemodiafiltration CHDF)

HDFの原理は上記に示していますが、CHDFとはHDFにContinuousを加え持続的に長時間血液透析濾過をする方法です。
体外循環の血液量、透析液量、濾過量は少なく病因物質の除去は長時間を要するが、循環動態、心肺、血管に与える影響も少なく低血圧の患者や集中治療室での重症患者の実施にも適している治療事態が長時間な為、体外循環中の抗凝固剤はメシル酸ナファモスタットを使用することが多い最近では腎機能の補正だけではなく、サイトカイン(炎症性物質)の除去にも関連があるとの報告もあるCHDFを行う機器自体もコンパクトなので各病棟など透析設備が無いところにも移動して治療ができる適応として維持透析患者の急性増悪・多臓器不全・急性肝不全・急性膵炎などの治療に使われる